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TRAILER
書簡
作品の内容に触れる記述もあります、ご鑑賞後お読みになることをお勧めします。
こちらには、様々な方からの書簡を掲載します。にいやの返信も掲載します。
試写を見てもらった友人、スタッフとのメールのやりとりです。公開するために書いたものではありませんが、作品の制作意図や技法、裏話的な事が語られているので掲載しました。重複した記述もありますが原文の雰囲気を壊さないため、そのままにしてあります。
・映像作家、井手豊氏との往復書簡
・元某アニメプロダクション撮影監督のY氏との往復書簡
・編集者の須川善行さんとのDMやりとり
・字幕担当の、ドン・ブラウンさん、櫻井智子さんとのやりとり
井手さん
映像作家、井手豊氏との往復書簡
にいやさん
『乙姫二万年』拝見しました。とにかく衝撃を受けました。
今まで観た事の無い映画ですね。全編通して夢だけを描いたものですか?
自分がよく見る夢という現象(唐突に場面が変わり、ありえないことが起こるのに疑問を持たず受け入れてしまう)を思い起こしました。
不気味なイメージがこれでもかと続きますがつい魅入ってしまいます。
底なしの青空へたくさんの人間が浮遊していくシーンなど虚無感に胸が締め付けられるようでした。怪獣映画のシーンも虚無感にゾクゾクします。
子供の頃に見た悪夢のような・・・。すばらしい映画ですね。
あと、いったいこれはどうやって撮影したのだろう?とこちらの部分も衝撃を受けました。
井手さん
丁寧な感想、ありがとうございます。
変な事ばかりやってきた55年の集大成です。夢はヒントにしています。
枕元に酒を置いて、飲んで寝て変な夢(断片でも)を見たら半覚醒状態でメモして。それを元にアイデアを考える。考えつつ酒飲んでまた寝る。また見た夢を半覚醒状態でメモして……。
これを繰り返してアイデアを作っていきました。体に悪いですね。
実際には全体を通して長編映画になる位のストーリーと設定もありますが、それは直接見せないようにして、重要な場面の断片をつなげています。
そもそも僕はキャラに興味がありません。
お話は好きだけど、通常のアニメーションや実写映画のようにキャラの行動をカメラで追ってストーリーを語る、という形式を取る気は無かったのです。そういうものは世界中にあふれてますから。『乙姫二万年』は情景そのものを描く作品なのです。キャラ(人間)も情景の一部として描くけど動かしません。そのかわり、現象(煙や爆発など、段ボールやカブト虫なども)は動かすのです。
見たらわかるでしょうけど、ワンカットがもの凄く長いです。画面全体、情景そのものを、じっくりと眺めてもらうための映画、というわけです。つまり、その情景の中に全体のストーリーやキャラクター達の感情の揺れなども煮込まれてて、見てる人には伝わるだろうと。
映像的には、絵と模型と写真と実写をごちゃごちゃに合成しています。
その他大勢の人々はNゲージ(鉄道模型)の人形で、1センチもないくらいです。最後にキャラ達が乗ってる黄色い車も、100円ショップで買ったもので3センチくらい。それを写真撮って大きくしています。
逆に街並みなど巨大なものは小さくして、世界のバランスが狂うように、その上で変な世界が成立するようにしているのです。使った写真や動画(空や風景など)は、この10年に武蔵美に通いながら撮影したものです。
舞台になったアパートは、実際に僕が暮らしてるアパート。
作品を作ってる間に、このアパートの中で様々なことが起こったのですが、またそのうちお話します。
本当は僕がやってるアニメ授業のように、写真を切って書き割りにして、粘土や人形などを並べて、それに照明を当てて、生で撮影したかったのですが残念ながら六畳間では無理。という事で、パソコン内でセットを組んだつもりで書き割りを動かしたり、照明効果でライトを動かしたりしてるのです。
またお会いした時にでも、細々としたエピソードはお話します。
本当に様々な偶然に助けられて完成した作品なのです。
井手さんの個展もご成功お祈りしています。
にいやさん
にいやさんがそもそもキャラに興味が無いというのが、もしかしたら僕もその感覚に近いのかな?と思いました。ここ6年間ほど虫が登場する映像を作ってきましたが、実は虫の生態にはまったくと言って良いほど興味がありません。名前すらです。
光や影や緑の中に虫や蛙などがたたずむ光景・情景を描きたい、それだけです。
僕も情景そのものを、じっくりと眺めてもらいたいのです。
絵と模型と写真と実写をごちゃごちゃに合成していると言う事ですが、それがとても不思議な映像になっていて、まったく飽きることなく観入ってしまいます。
NHKの「おとぎのへや」の様な操り人形の大家さんのロボット姿や幽霊船などたまらなくわくわくします。六畳間の狭い空間でつくられた事が逆に宇宙的な広がりを感じてしまいます。
井手さん
確かに井手さんの作品もキャラ中心ではないですね。
劇映画を撮っても、記録映画を撮っても、登場人物込みの情景……というよりも、宇宙そのもの撮ってるように思えます。井手さんの世界は様々な存在が共存していて、見ていると自分もその中にいるような気持ちになってきます。母親の胎内が巨大な海だとしたら、その中に浮かびながら、魚や貝やエビやサンゴや、深海生物から水の上を飛ぶカモメまで、じ〜っと幻視しているような感じ。虫や葉っぱや雨だれを見ながら、ぼんやりと不思議を感じていた、物心つく前の幼児期の無時間性を思い出します。
高橋洋さんとも昔よく話しましたが、この無時間性こそ本来映画が持っていた重要な要素だと思うのです。トーキーになり、ビデオ撮影ができるようになり、映画がどんどん現実(の音や時間の流れ)に侵食されています。我々自主作家はわがままに作品をつくれる立場ですから(お金はないけど)、現実世界とは別の時間の流れを作品にしなければならないですね。
井手さんの新作、期待しています。個展のご成功をお祈りしています。
そのうち一緒に上映会しましょう!
* 井手豊氏は、岡山県津山市在住の映像作家。にいやとは25年来のつき合い。一緒に映画祭をやったり、8ミリ映画を作った仲です。井手さんは2019年の秋に個展を予定しています。誰も見たことないような、昆虫の姿を撮り続けている映像作家です。井手さんは昆虫の姿に宇宙の深淵を見ている……というと大げさに聞こえるかもしれませんが、本当なのです。井手さんの作品、見たら腰ぬけますよ。お近くの方、井手さんの個展を是非ごらんください
Y氏
元某アニメプロダクション撮影監督のY氏との往復書簡
2018.12.17 Y氏より
お疲れ様です。『乙姫二万年』見させていただきました。
見たの自体は前ににいや君からメールをもらってすぐに見たのですが忙しかったのといつもの筆不精に加えてなかなかうまい感想の言葉が見つからずズルズルときてしまいました。
この夏に音声未完成バージョンまで見せてもらっていましたがやっぱりキチンとした完成バージョンで見ると印象が変わりますね。
月並みな言葉しか出てきませんがとにかく面白かったです。
平面と立体(2次元と3次元と言った方が良いのか)が1つの空間に混在しつつそれらが互いに自己主張しながら展開していくので見ていてずっと心の中に言い知れぬ不安感と緊張感を残しつつ最初の夢のシーンからラストまで進んでいく。
この感覚ってなんなんだろうと考えて思いついたのは昔の映画やドラマであった唐突に画面に合成されるコマ撮りアニメの画面を見たときのあの違和感と同じだと言う事に気づきました。
あれはそのカット、もしくはシーンの間だけなのでその不安感は持続することではないのですがこちらは始まってから終わるまでずっと続くのでその感覚がなんとも癖になってきます。
フレームの中がアニメーションしていると言うよりフレーム自体がアニメーションしていてある意味アニメーションと言う意味では原初なのかと感じてきます。
それと乙姫単体で見ても十分面白いですが烏賊祭り、人喰山とこれまでの流れを追っていく意味で3本続けてみると尚面白いのではと思います。乙姫の中にこれまでの作品で培ってきたものがあるのでその源流を見た上で見るのも面白いかもですね。
後はテロップに名前入れていただいてありがとうございます。
まさかあの程度で名前入るとは思いませんでした。
年末年始は今回もそちらに行くのは難しいですね。
結局日本に帰るのが大晦日になってしまいますので。
大連には5日に戻りです。
youtubeでまた佐藤肇見つけました。
https://youtu.be/nIyQVxS7KYE
ザ・ガードマンの1本ですがこれ面白かったです。
成田三樹夫の演技が特にいい。内容はもう滅茶苦茶で物語の整合性もなにもあったもんじゃありません。脚本が山浦弘靖と佐藤肇の共同になっているのですがこれって元から共同脚本だったのか、元々普通のシナリオを現場で無茶苦茶にしちゃったから共同脚本になったのか?
僕は後者だと思うのですが。
でも佐藤肇ってもっと評価されるべきだと僕は思うのですけどねえ。
2018.1.17 にいや返信
ありがとうございます。
えらくきちんとした感想で嬉しいです。
先日、今年武蔵美を出てアニメーターになった卒業生が、業界のあまりのブラックさにあきれ果て、退職しました。で、今二年生のアニメーターになりたがってる学生とうちで引き合わせて学外進路相談会をやってました。
アニメーター辞めた卒業生は「自分は手描きアニメをやりたかったけど、今の業界はそういう方向で作品を作ってない」「今のアニメは静止画と口パクばっかり」「業界は今の日本社会のダメさの縮図」と話してました。搾取と無責任の構造、まさにその通りです。
その後、学生たちに『乙姫』見せて色々話してて。
『乙姫』は、キャラを動かしてストーリーを語るのではなく、ストーリーをはらんだ情景そのものを見せるのが目的で、キャラも情景の一部という作り方。だからキャラは動かないけど、現象(爆発や煙など)は動かす。
昔「ユリイカ」でガイナックスの山賀さんが「アニメーターは現象の好きな人がなる職業です」
と言ってたけど「今はキャラを描きたい人がアニメーターなるんだろう」という話を学生としてました。
業界に入ってキャラを描くばかりがアニメーションの道ではないですからね。
で、話をしてるうちに今更ながら自分の方向性に気付いたのでした。
実は僕は子供の頃からキャラに興味がなく(見るのは好き)、情景や現象に興味があったのです。
川でくるくる回る木の葉とか、沈んで浮かび上がるコーラの瓶とか。20分でも30分でも眺めていました。しかし、お話は好きなのでストーリーがないと物足りない。
キャラ好きでお話し好きならマンガ家になればよかったんですが、作りたいのはアニメーション。
でも、業界に入るなら演出家になる気はなく(めんどくさそう)アニメーター志望でした。
しかし、映画を作ってるくせに趣味は写真で静止画の方が好き。
なんと……実は僕は美術(*アニメーションの背景)向きの人間だったんですね。
業界で、なにかの理由で美術に行ってればそのまま居ついてたかも……。
自分の個性に気づかないまま個人作家になって、いわゆるアートアニメのような作品を作りたいわけでもなく。あ〜でもない、こ〜でもないと延々遠回りして行き着いたのが『乙姫』でした。
つまり、あの作品は美術主導のアニメーションだったのです。
だから『ベラドンナ』とか大好きなんですね。
とまあ、55歳も終わりに近づいて、やっとこさ自分の個性に気付いたのでした。
『ザ・ガードマン』見ました。『ザ・ガードマン』じゃなくて、『ザ・成田三樹夫』でしたね。素晴らしい。
* Y氏は、デザイン学校時代の友人。もう37年のつき合いになります。彼は元、某アニメプロダクションの撮影監督で、現在は中国の大連で撮影の仕事をしています。帰国のたびに僕のアパート(『乙姫』の舞台)を根城にして、数日間話して行くのです。
『乙姫二万年』の劇中の花火の映像はY氏の提供。花火の撮影ができなくて困ってたら、帰国してたY氏が「花火の動画なら、俺持ってるで〜」と、その場でくれたのです。
彼の住んでるのは超高層マンションで、あの花火は春節の打ち上げ花火なんだそうです。
本来、主人公たちが住んでるアパートは二階建て。だから花火を見上げる絵になるはずだったんですが前記の理由から、xxxを乗せたxxxがせり上がってくる……という構図になったのでした。
『乙姫』は、こういう偶然がなんども起こり、様々な人の手助けで完成した作品なのです。
須川さん
* 編集者の須川善行さんにコメントをお願いしたら、ちょっと恐れ多いコメントを頂いて。やりとりしている間に恥ずかしい事を思い出してしまったので、こちらに掲載します。
須川 コメント書いてみました。宣伝っぽい!(笑)「10年ぶり」が事実に即していないようでしたら、適宜直してください。 ======================= にいやなおゆきさんを表現することばといえば、「巨匠」しか思い浮かばない。そういうと、ご本人から「こんな貧乏な巨匠いないよ」と笑われそうだが。 しかし、自分自身の頭を使ってこれまでにないことを考え、自分自身の手を使ってあらゆる手段を検証し、自分自身の目を使ってそれらをつなぎ合わせ、自分自身の尺度を使って新しい世界を現出させる、しかも(これは必要条件ではないとしても)ほぼひとりで。そんなことができる人は「巨匠」と呼ぶほかないではないか。 そんなにいやさんが10年ぶりに新作を完成させた。神話、日常、奇想、人情、SF、ロマンス、冒険、歌、アクションといった思いつく限りの表現形式を、コマ撮り、CG、実写、合成、切り絵、人形、工作、アリモノ利用といったあたう限りの手法とテクニックによってまとめ上げた前代未聞のごった煮エンタテインメントだ。こちらの予想をはるかに超えたにいやさんの「巨匠」ぶりには、ただただ唖然とするばかり……。
にいや さ、さすがに「巨匠」は恥ずかしいです……。なんか、もうちょっと庶民的な言葉はないでしょうか。なんなら、後半だけでも十分以上にありがたいので。 にいやさんが10年ぶりに新作を完成させた。(中略)前代未聞のごった煮エンタテインメントだ。 これをベースにちょっと整えていただければ……いかがでしょう。
須川 まあ、自分でいうなら恥ずかしいでしょうが、他人がいってることですから……(笑)。
須川 ちなみに、僕は『カリオストロの城』を劇場で観るときにはすでに宮崎駿は巨匠だと思ってましたし、大友良英さんのことはCDを出す前から巨匠だと思ってましたよ、なぜか。 それと同様に、にいやさんの「烏賊」をイメリンの上映会で観たときに、もう「この人は巨匠だ!」と思いましたからね。 それで読む人に笑ってもらえるくらいでちょうどいいんじゃないでしょうか(笑)。
にいや 笑ってもらえれば良いんですが……。
じゃあ恥ずかしいけど、このまま頂きます。ありがとうございました。
にいや 以前、須川さんと鎮西さんに「ロマンティックだ」と言われて、なんだか恥ずかしかったんですが。実は構想時の仮題が「ロマンス」だった事を思い出しました(ますます恥ずかしい)。
須川 ひゃー!(笑)
にいや 柄にもなく……。
にいや せっかくなんで、このやりとりをそのまま載せますか。
* ということで、DMでのやりとりをそのまま掲載させていただきました。須川さんが「ユリイカ」の編集長だった90年代、僕もアニメーション評論を何度か書かせていただきました。文中の鎮西さんは、大傑作青春歌謡映画「パンツの穴 キラキラ星みつけた!」の映画監督、鎮西尚一さん。「乙姫」主人公役の加藤賢崇さんも「キラキラ星」に出演されています。
字幕
アンカー 1
* ついに往復書簡の目玉、字幕制作の過程を公開いたします。
翻訳を担当していただいたのは、インディペンデント映画から大作映画まで幅広く活躍されているドン・ブラウンさん。
字幕制作は、株式会社Planet Movie の櫻井智子さん。ドンさんと櫻井さんは何度も訳文をすり合わせ、作品世界を広げる字幕を作り上げてくださいました。
本来、こういう字幕制作の過程をお見せすることはないのですが、めったに無い機会ですし、大変に面白いやりとりなのでお二人の許可を得て公開させていただきます。
映画を制作されている方、翻訳や字幕に興味のある方、必見です。大変に長い記事になりますが、どうぞお楽しみください。
218.8.28 にいやより
ドン・ブラウンさま
『乙姫二万年』の字幕ガイドとタイムコード入り動画を送ります。
ダウンロード後、動画は削除せずにそのまま置いておいてください。
字幕用シナリオを添付します。
文中、赤文字でも書き込んでおきましたが。
・タイトル『乙姫二万年』をどう翻訳するか。
Otohime: Princess of 20,000 years in the future ←「乙姫 二万年後のプリンセス」とでもするか。
記号的に OTOHIME 20000 とかでもいいのか(『デスレース2000年』みたいでカッコ良いかも)
そもそも、日本人には乙姫の出てくる『浦島太郎』はおなじみですが、海外の人には意味がわからないでしょうし。なにか良い翻訳はないでしょうか。
・スタッフタイトルロールなど、人名の表記。
今ではイニシャルも姓・名の順で表記するようになって来ていますが。にいや なおゆき なら NIIYA naoyuki で良いでしょうか。ローマ字表記ではなく、英語表記でお願いしたいのですが。姓・名の順、英語での名前表記、宜しくお願いします。
・今回の作品は、日本の文化がわからないと伝わらない箇所が多いかもしれません。
10:06 男N「月末は大家さんのお墓参りだ」は「お墓まいり」と「参る(行く、来る)」をひっかけたダジャレなのですが、こういう部分をどう翻訳するか。
13:50のカッパも、説明無しでも問題無いとは思いますが。どこかに解説が入った方が良いのか……。
18:01以降の、ビフテキ、ビール、お寿司は問題無いですが、お汁粉はわかりやすいスイーツに変えてもらった方が良いのかも。
18:38の「象の花子」も、日本では「花」と「鼻」をひっかけた伝統的な名前ですが。英語圏で「花子」のような愛称的な象の名前はあるでしょうか。
18:49の「なまんだぶなまんだぶ」はそもそも「南無阿弥陀仏」ですが。むしろ「クワバラクワバラ」のように厄除けのような言葉でもあります。
20:51の「ハンペン」は英語圏に似た食べ物があるでしょうか。ハンペンのままで良いのか?
21:01以降の『雨降りお月さん』は、ネットに歌詞の英語訳があったので参考に載っけておきました。もともとが歌詞ですから難しいですね。
・字幕ガイドには入れていませんが、怪獣映画のタイトル『ガスラ対ギリゴン』など、画面に映った文字の翻訳も、必要ならお願いします。
・カッパとの乱闘(15:28以降)、UFOが降りてくる場面の拡声器の声(07:30以降)、火事場の怒号(19:04以降)など、大人数の声が錯綜する場面。
字幕ガイドでは端折り気味にしてますが、必要なら増やしてもらっても構いませんし、わかりやすいセリフに変更してもらっても構いません。
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218.9.3 ドン・ブラウンさんより
新谷様
お世話になっております。
お返事が遅くなり申し訳ございませんでした。
昨日まで仕事が立て込んでおりました。
動画とシナリオと詳しいご説明ありがとうございます。
英語タイトルですが、作品を拝見してから判断した方がいいと思いますので、
もうしばらくお待ちいただけますでしょうか。
スタッフロールの件ですが、
クレジットの字幕を翻訳する時は通常名・姓順(例えばNaoyuki NIIYA)となります。
英語ネイティブまたは英語を第二国語にしている人にとって一番分かりやすい表記の仕方です。
日本語順にしたい、という想いがございましたら、
もちろんそうすることは可能ですが、個人的には英語順をお勧めいたします。
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2018.12.28 字幕担当櫻井さんより
にいや様
お世話になっております。
大変お待たせをいたしました。
乙姫二万年の英語字幕 仮ミックス映像をご案内いたしますので、ご確認をお願い出来ればと思います。
追伸:
つたない感想で恐縮なのですが、作品のなかで使われる実写のものと描かれた寓話的な世界の交わり方が、えも言われぬ面白さの映画でした。
ご飯や、花火や原発、国分寺の駅、(沖島監督も映っていたように見えました)がどうしてこんなにリアルでノスタルジックに感じられるのでしょうか。
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2018.12.28 にいや返信
櫻井さま Ccドン・ブラウンさま
お久しぶりです、字幕ありがとうございます。
今忙しいので、まだ動画は確認していませんが、二点ほどお答え、お伝えしておきます。
ドンさんの質問
「ポスター提供は何のポスターでしょうか」
これは、おでん屋さんの中に貼られていたビールのポスター(ビキニの女性の)の事です。
数年前、武蔵美の卒業制作で展示作品(からくり屋敷のような建物)の中に貼られていたもので、おでん屋さんの飾りにちょうど良いので、作者のNさん送ってもらったのです。
意味がわかるようにするなら「おでん屋内装ポスター」になるでしょうか。ちょっとくどいですけど。
Nさんへの謝意として「協力」に入れても構わないとも思いますが。
それと、未来世界の怪獣映画を「コンテンツ」と呼んでいますが、これには皮肉が混じっていまして。
以下は、僕が卒業生に送った祝辞の一部です。
「2000年代に入り、経産省、特許庁は、アニメ・マンガ・ゲームを含む作品・キャラクタービジネス、文化などに代わる新しい公用語を模索していました。
そして、2004年「コンテンツ」という言葉が正式採用されました。
「コンテンツは」政府が法律で決定し、経済戦略のために交付した言葉なのです。
政府の考えるコンテンツは消費されるためのもの、国が自由に使ってお金儲けができるためのもの。使いやすく、誰にでも受け入れられ、手っ取り早く利益になってくれるもの。誰でも、いつでも、どんどん再生産可能なもの。だから、砂利や苦味があったら困るのです。つまり、コンテンツに作者は不要なんですね。コンテンツはコンテナに入れられる大きさや形でなければ困ります。つまり、求められる「正解」も最初から決められているわけです。」
さすがに劇中の「コンテンツ」という言葉一つで、こういう日本の現状(若い人たちはなんの疑問も持たずに「作品」を「コンテンツ」と呼んでいます)が伝わるはずもないのですが。ああいう言葉を使ったのは、以上のような意味や皮肉が入っていたのです。
『乙姫二万年』に丁寧なご感想ありがとうございます。
沖島さんは写っていませんが、実はシナリオを沖島さんに頼もうかと思っていたのです。沖島さんは、うちから自転車で15分くらいのところに住んでおられて、よく遊びに行っていました。新作を作ろうと思った時『あの男は誰だ』で、僕が喋ったセリフがとてもスムーズに頭に入ってきたので(僕は物覚えがものすごく悪いのに、沖島さんの長セリフは一発で覚えられました、思考回路が似てるようです)沖島さんに頼もうか……と。しかし、なにも無い白紙の状態でお願いするのも悪いので、ノートに様々なアイデアを書き出して行ったのです。すると、そのまま絵コンテが完成してしまって、沖島さんには頼み損ねてしまい……。
コンテが完成したら即座に作業に入るので、沖島さんの家にも行かなくなり、さらに学校も始まり、「たまには顔出さないと」と思っているうちに夏。「あと一週間で夏休みだから、休みになったら沖島さんの所へ行こう」と思っていた時に西山さんから電話がかかってきました。結局沖島さんにはご挨拶もできず。
『乙姫二万年』というタイトルは、沖島さんの『一万年、後。』(注)へのアンサーのようなつもりもあるのです。
先日、井川さんと常本さんに作品見てもらったら、井川さんが「沖島さんの『一万年、後。』と同時上映が一番良い」と言ってくれました。沖島さんに見てもらいたかったですね。
また、もしも沖島さんがお元気で、もうちょっと滑舌良かったら小川さんの声優も御願いしたかったのです(結局僕が演りましたが)。
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字幕検討用スプレッドシートより抜粋
(タイトル案)
原文 乙姫二万年
字幕 Otohime: Princess of 20,000 years in the future
コメント(Donさん&櫻井)
Donさんより
タイトル案ですが、かなり長めなので、もっと簡潔にした方がいいと思います。以下の代案はいかがでしょうか。
Otohime: The Princess from 20,000 A.D.
Otohime: Princess of the Future
(ダンボールの中の声)
原文 あ、いたいた!
字幕 Oh, there you are!
コメント 段ボールの中の声(8-13)
場面外からの声は斜体にするという表記ルールがあるのですが、ユキオ君が段ボールの中(映っている部屋)にいながらどこかよその世界にいる感じをだすなら、ここは斜体かと思いました。
特に字幕でそのようなニュアンスを出す必要がなければ、このまま正体にしておきます。
にいや 斜体でお願いします。
(「コンテンツ」に関して)
原文 でも、エンタメ業界のコンピューターは生きていて、自動でコンテンツを作り続けています
字幕 But showbiz computers are still creating content automatically.
櫻井 監督のコンテンツに対する説明を受けて変更などありますでしょうか? Contentを so-colled Content や'Content' などと強調すればある程度伝わるでしょうか? ドンさんのご意見を頂ければと思います。
Don But showbiz computers are still creating so-called "content" automatically.
contentをクオテーションに入れて"content"にする手もありますが、ご提案通りso-calledを付け加えた方がその皮肉の意図がより顕著になると思います。
それでも、監督の意図をこの字幕で完全に伝えるのは無理ですが,分かる人は分かる、と確信しております。
(幽霊船での台詞)
原文 行ってしまう!みんな行ってしまう!
字幕 Oh no! They're all leaving!
コメント 監督へ確認 Oh no! They're taking all of us! 映像では幽霊船でさらわれているようにも見えますので、この代案の方が合っているでしょうか。
にいや 「去っていく」というニュアンスですので、leavingで良いと思います。
櫻井 仮ミックスのままで進めます。
Don 承知いたしました。
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2019.1.3 にいや返信
櫻井さま Ccドン・ブラウンさま
あけましておめでとうございます。
1/3、早々に帰京して参りました。
字幕動画とスプレッドシート、確認いたしました。
スプレッドシートに諸々書き込んでありますが
ご相談したいこと、こちらにも書いておきます。
・タイトル
シンプルに Otohime: Princess of the Future が良いかもしれません。
ご相談ですが……タイトルとは別に20000という数字をアイコン的(マークのように)に使いたい気持ちもあります。
チラシやスチルの端っこに、小さく OTOHIME 20000 のように入れるのは不自然でしょうか?
または OTOHIME 20,000 OTOHIME 20,000 A.D. とかはいかがでしょう。
・「お汁粉」
「お汁粉」が「red bean soup」になっていますが、デザートの甘味(スイーツ)なのでなにか別のものに翻訳していただいても結構です。日本の甘味で、英語圏の人にもわかるものがあるでしょうか?
もし無理なら、日本の甘味にこだわらなくても良いと思います。高級なフルーツでも構いません。
・「竜宮城」
これも難しいのですが……。
「竜宮城」の意味がわかるでしょうか。例えば「Sea dragon castle」ではいかがでしょう?
または、海に住む神や魔人を意味する名詞(例えば Poseidon's castle)では不自然でしょうか。
難しい翻訳ばかりですみません。
まだ時間ありますので、お返事はゆっくりで結構です。
では、失礼します。
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2019.1.3 字幕担当櫻井さんより
にいや様
あけましておめでとうございます。
先に頂いたメールの内容と今回のお戻しをドンさんと改めて確認させていただき、追ってお戻しさせて頂きます。引き続き、よろしくお願いいたします。
そして、年末に丁寧なメールを頂いていたのに慌ただしさに紛れてすぐにお返事できず失礼いたしました。本作と「一万年、後・・・・。」(注)の関係のお話を聞くことができて、とてもありがたく思います。
「一万年、後・・・・。」も忘れられない映画です。
私が沖島さんの訃報を聞いたのは、ちょうどラピュタ阿佐ヶ谷で組まれていた特集で「YKK論争」を見終わった直後でした。
映画の最後に、すでにはるか昔に亡くなった人物たちが 「懐かしい、生きていたころが懐かしい」という場面があるのですが、一連の出来事のせいもあり、沖島監督のことを考えるとき、このセリフが頭から離れません。
今となっては沖島監督自体がそう言っているように感じている節があります。
このセリフの、どこからか、時間をこえたところで自分たちが見られているという感覚、見返されているという感覚が、にいや監督と沖島監督の作品に共通しているように思いました。
私が先だってのメールで「ノスタルジック」という言葉でお伝えしたかったのはこのことかもしれません。それはもう少し拡大してしまうと、物と人から発せられる「歴史的な感覚」ともいえるかもしれません。
2019年が少しでも良い年になりますように。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
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2019.1.10 にいやより
櫻井様 Ccドン・ブラウン様
かなり寒くなって来ましたが、お元気でしょうか。
実は、今『乙姫』のHPを作っています。
通常の「コメント」欄以外に「ヘビーコメント」欄を作ろうと思ってます。
「ヘビー」の方には長文の批評や、書簡なども載せたいと思ってます。
ということで……櫻井さんとのやりとりを載せては問題あるでしょうか。
書簡の最後に「この日本語がこう翻訳された」的に、いくつか対訳も載せたら良いかもしれません。先にお願いした竜宮城やお汁粉など、僕の提案通りだと誤訳と言われてしまうかもしれない意訳や、カッパがspriteになったり、なまんだぶがOh lordy,Oh lordy…になったり、いろいろ興味深いです。
よろしければ、櫻井さんの方でいくつかピックアップして頂けると助かります。
では、色々お願いばかりですみません。
失礼します。
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2019.1.11 字幕担当櫻井さんより返信
にいや様
ご連絡ありがとうございます。
ようやく冬らしい寒さになってきましたね。
字幕制作のやりとりを載せる、面白いとおもいます。
翻訳、字幕制作の仕事は個人的にとても大切だと思うのですが、
にいやさんのおっしゃる「コンテンツビジネス」の中では軽視されていて働く環境は悪くなるばかり、と嘆かわしいのですが、こういうことをしているんだということが、少しでも伝わるとうれしいです。
面白い英訳の件、承知しました!
ドンさんの意訳はいつもながら、感服させられるものが多いので、追って、いくつか出させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
2019.1.14 字幕担当櫻井さんより
新谷さま
お世話になっております。
今、字幕を再度確認しておりまして、追加で教えて頂きたい点が出てしまいました。
おでんやでの会話で帽子の中から現れる女性が「お父ちゃん」といいますが娘という理解で大丈夫でしょうか?
ドンさんと私で「妻」「娘」と解釈が分かれており教えて頂ければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2019.1.14 にいや返信
櫻井さま Ccドン・ブラウンさま
うわ、そういうところで見解が分かれるって面白いですね。
あの女の子は(中略)です。
本当は、あのおじさんは(中略)なのです。娘は(中略)でああなってます。
さらに(中略)で生活してるのです。そういう変な設定はたくさんあるんですけど。
例えば、例えば(中略)牛乳瓶は(中略)メガネは(中略)とか。
こちらからも一つ。
金子二郎さん(脚本家、『カードキャプターさくら』や『ケータイ捜査官7』など、金子修介監督の弟)はロボット小川さんを動かしてくれてるので、「操演 金子二郎」と追記したいのですが。「操演」って英語でどうなるんでしょう。ピアノ線で飛行機とか飛ばす、あれですけど。いかがでしょう?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2019.1.17 字幕担当櫻井さんより
新谷様
さっそくお返事を頂きましたのに、すぐに返信ができず失礼いたしました。
なんでくっついてるのかなと思っていたのですが、
そんな面白い裏の設定があったのですね。
いろいろと教えて頂いてありがとうございました。
本日ドンさんより、チェックバックへの回答を頂きましたので、添付にてご案内いたします。
クレジットの「操演」と「ポスター提供」の英訳がまだ頂けていないのでこちらは追加で催促をしております。五月雨で申し訳ありません。
チェックバックのエクセルとは別に、もう一点添付したエクセルですが、これは私とドンさんが、新谷さんに仮ミックスをお渡しする前に行ったやり取りです。
ドンさんからの初稿で仮ミックスをつくり、私がコメントを入れてドンさんにお渡しし、ドンさんが私の質問への回答と、ご自分の手直しを入れて下さったリストになります。
監督が指摘されていた「なんまんだぶなんまんだぶ」も初稿では「Good heavens...」だったことが分かります。
内容を理解していないということで気を悪くされる方もいらっしゃるため、普段は監督にはお見せしない内容ですが、娘/妻の解釈が面白いとおっしゃってくださったので、こちらも見て頂いたらどうかと思い、参考までにお送りいたします。
別途ドンさんに気に入っている字幕を出してほしいとお願いしておりまして私の分と合わせたものをお送りさせていただく予定です。(今回の原稿でオレンジになっている部分は私の方のピックアップですが、コメントなど加えて取りまとめてお送りします。)
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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再度、字幕検討用スプレッドシートより抜粋
(小川さんの食事)
原文 お寿司も食べてるよ お汁粉まで
字幕 - And eating sushi. - And red bean soup!
にいや 「お汁粉」が「red bean soup」になっていますが、デザートの甘味(スイーツ)なので。なにか別のものに翻訳していただいても結構です。
Don - And eating sushi. - And sweet bean soup!
(竜宮城)
原文 竜宮城入口
字幕 "Ryugu Palace entrance"
コメント 台本記載なし 不要でしょうか?
にいや 「竜宮城」の意味がわかるでしょうか。例えば「Sea dragon castle」ではいかがでしょう?
Don "Sea Dragon Palace entrance" でも全然問題ないのですが、「龍の神の棲む城」だとしたら、"Palace of the Dragon King" でいかがでしょうか。(entranceは不要かと思います。)
Sea Dragonよりかっこいいですし、2006番をDragon King Picturesにしたら、よりB級テイストが出て面白いと思います。ご検討くださいませ。
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2019.1.17 字幕担当櫻井さんより
新谷様
お忙しいところ
ご連絡ありがとうございます。
ちょうど、ドンさんから保留の2点も返事を頂いたので、お送りします。
操演:英語表記
通常はPhysical Effectsだと思いますが、実際にワイヤーで人形を動かしているようですので、Puppeteeringの方が近いでしょうか。
それでは味気ないので、Robot Ogawa operator: KANEKO Jiro でいかがでしょうか。
ポスター提供:
Poster in Oden shop: NISHIBORI Masumi でいかがでしょうか。
エンドロールの件、ありがとうございます。
もし差し支えなければ、英語字幕 として頂いても良いでしょうか?
どうぞよろしくお願い致します。
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2019.1.17 にいや返信
櫻井さま Ccドン・ブラウンさま
色々ありがとうございます。
* 表記の件
・Robot Ogawa operator: KANEKO Jiro で結構です
・Poster in Oden shop: NISHIBORI Masumi で結構です
・英語字幕 ドン・ブラウン
櫻井 智子(Planet Movie)了解しました
* チェックバックの件
・1 では、 Otohime 20000 で行きましょう
・53 But showbiz computers are still creating so-called "content" automatically. 了解しました
・115 And sweet bean soup! 了解しました
・139 You've had too much, Daddy! 了解しました
・145 When my daddy drinks too much, I get drunk too. 了解しました
・2004 "Palace of the Dragon King” 了解しました
・2006 "Dragon King Pictures presents” 了解しました
もうひとつ
タイトル Otohime 20000 を、大文字で OTOHIME 20000 ではおかしいでしょうか?
大文字の方が、押し出しが強くてデザイン的に使いやすいんですが。
以上、よろしくお願い致します。
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2019.1.18 字幕担当櫻井さんより
新谷様
お世話になっております。
下記、ご質問についてドンさんからご意見頂きました。
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タイトルの件ですが、
普段は大文字表記をお勧めいたしません。
日本語の中のローマ字表記には大文字が普通に使われておりますが、英語ネイティブにとってはオールキャップスがうるさく見えてしまいます。
しかし、これは特別な、強烈なインパクトのある作品として、例外でいいと思いますので、大文字でも大丈夫だと思います。
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とのことです。
個人的には頂いたロゴ案で使用されるのでしたら大文字がかっこいいかなと思いました。
どうぞよろしくお願いいたします。
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2019.1.22 にいやより
櫻井さま Cc ドン・ブラウンさま
色々ありがとうございます。諸々了解しました。
往復書簡と、面白い翻訳の記事、HPが完成したら確認していただきますので、しばらくお待ちください。
2019.1.26 にいやより
櫻井さま Cc ドン・ブラウンさま
たびたびすみません。
アップした動画が、なぜかカクカクしてるので、現在再度書き出し直しをしております。デジタルは難しいですね。
一つご相談があるのですが。
タイトルの OTOHIME 20000 は気に入ってるのですが、龍王の娘、海のお姫様というニュアンスをなんとか伝えたいです。それがラストにつながる伏線なので。
冒頭、オブジェが回転して「2.5 Danimation」と出る部分と、炎のオープニングの間に黒みを入れて、黒バックに Otohime is the daughter of the dragon king of the sea. と前説字幕を入れたらどうでしょうか。
上記の英語はパソコン翻訳ですが、日本語では「乙姫とは、海に住む龍王の娘である。」としたいのです。
いかがでしょうか?
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2019.1.27 ドン・ブラウンさんより
新谷様
お世話になっております。
「乙姫とは、海に住む龍王の娘である。」の部分ですが、より前説っぽくするとしたら、
「There once was a girl named Otohime. She was the daughter of the dragon king,who lives in the sea...」
(かつて、乙姫という名の女の子がいました。海に住む龍王の娘でした…)
または、
「I once knew a girl named Otohime. She was the daughter of the dragon king,who lives in the sea...」
(かつて、乙姫という名の女の子を知っていました。海に住む龍王の娘でした…)
それが長すぎるようでしたら、以下の案でもいいと思います。
In the sea, a dragon king lives. And his daughter’s name is...Otohime.
(海には、龍王が住んでいます。そしてその娘の名は…乙姫。)
文字が黒バックにフェードイン・フェードアウトする感じを想像して翻訳いたしました。
スター・ウォーズの『A long time ago in a galaxy far, far away...』のように。
いかがでしょうか。ご検討くださいませ。
どうぞよろしくお願いいたします。
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2019.1.27 にいや返信
ドン・ブラウンさま
ありがとうございます!
「I once knew a girl named Otohime.
She was the daughter of the dragon king,who lives in the sea...」
(かつて、乙姫という名の女の子を知っていました。海に住む龍王の娘でした…)
で行きたいです。I に含みがあって、とても良いです。
これが入っていれば、乙姫に興味を持って「浦島太郎」を調べてくれる観客もいるかもしれません。
一応『乙姫二万年』は『浦島太郎』を下敷きにしていますので。
何度も何度も質問、すみませんでした。
たぶんこれで英語字幕版は完成のはずです。
現在、HP用の字幕制作往復書簡をまとめているところです。
近々お送りしますので、ご確認をお願いします。
かなり長い記事になりますが、こういう機会はなかなか無いので興味深い記事になると思います。
では、またメール差し上げます。
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*先にお願いした、面白い翻訳の件。櫻井さんとドンさんにお返事いただきました。字幕に興味ある方、映画を制作されている方、是非お読みください。
2019.1.22 字幕担当櫻井さんより
新谷様
お世話になっております。
お時間を頂いてしましたが、今回の翻訳で私が面白いと思う箇所を取りまとめましたので、お送りいたします。
最近多い、セリフ中心の映画ですと、どこを生かしてどこを省くのかという取捨選択と要約が翻訳者さんの腕の見せどころかと思うのですが、「乙姫二万年」はそういった映画ではないので、どういう部分をご紹介しようか少し考えました。
以下、結構な分量になってしまいましたが、ご覧いただければと思います。
◆山田さんのセリフ
うるせえ、この野郎!
Go to hell, pig!
そんな事したら、俺がバラしたと思われるじゃねえか!
The pigs'll think I offed it!
→警察をPigと呼んでいて、やくざの汚い口調がいい感じで出ていると思いました。
◆何気ないやり取り
一見何をいっているのかわかりづらい部分のニュアンスがきっちり出ているなという字幕です
ああ~、良い風が吹くねえ~
Ah, what a lovely breeze.
→良い風が「lovely breeze」と訳出されている部分ですが、日本語で理解されているラブリーとはちょっとニュアンスの違う「気持ちのいい」「すてきな」というの意味を理解していただけるかなと思いました。(これは逆に日本語を通した英語の勉強になってしまいますが…)
(人類も滅びています の後の)
人類も?
Why?
→「人類」という言葉を繰り返すのではなく、疑問にして次のセリフにすんなりつなげる、流れのよい訳だと思いました。
こういった要約が、短い字幕でも不足なく、かつ流れよく、観る方の理解を助けていると思います。
大変だよ~(小川さんが倒れたよ~! に続く)
Oh my!
(あなたにそっくり の後の)
そうかなあ~
You think?
それぞれのキャラクターによく合ったニュアンスになっていると思いました。
◆そのままだけど良い
音のリズムの問題だと思いますが、よいなと思った字幕です。
象の花子だ!
Hanako the elephant!
さようなら~さようなら~
Farewell! Farewell!
→Good-bye も使えると思うのですが、今生の別れのような、切ない感じが出る選択だなと思いました。
◆歌
歌の翻訳は詩作のようなもので、チェックの時楽しみにする部分ですが、いいなと思う歌の翻訳は、「言葉自体が自由で楽しんでいる感じ」が伝わってくるような気がします。
お嫁にゆくときゃ誰とゆく
When I go to be a bride
Who shall be my groom?
一人でからかささして行く
With a paper umbrella
I shall go alone
→日本語と文章の構成も揃えてあって言葉のリズム感がよいなと思います。
文語的な「shall」(~するつもりである)という使い方が原文ととてもあっていると思います。
お馬にゆられて濡れてゆく
Of the horse I'll sit upon
As the rain drenches us well
→直訳すると「お馬の上に私は腰かける雨が私たちをすっかり濡らすなか」とても詩的だと思います。
◆注意して訳出した箇所
俺の顔がアパートになっているんだ(の後の)
なってますね
It really is
→目が覚めてもそのままですよ。「It still is.」という案と
実際にそうなっているよ「It really is」というところでドンさんと意見を出し合った箇所です。
◆おまけ
おばさん、あたしにはハンペンちょうだい
Ma'am, fish cake for me.
→餅はrice cake ですが、はんぺん「fish cake」の方が英語でも感じが出るなと思います。
以上、新谷さんが期待されていたような回答になっているか不安なのですが適宜使っていただければと思います。
ドンさんからもお気に入りの字幕を出していただけることになっておりまして、どんなものが出てくるのか、私が選んだのとは全く違ってくるのか楽しみです。
どうぞよろしくお願いいたします。
2019.1.22 字幕担当櫻井さんより
新谷さま
五月雨に失礼いたします。
ドンさんからも翻訳に関してコメントが参りましたので、
ご案内申し上げます。
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字幕12:大丈夫だってば、そ~っとそ~っと
Don't be afraid.
Softly, softly...
『Softly, Softly』は60年代のイギリスのテレビドラマのタイトルでもあったので、
「そ~っとそ~っと」を聞いたらすぐに思い浮かびました。
もうかなり昔のシリーズで、分かる人は少ないはずですので、翻訳家の自己満足と言われても何も言い返せません(笑)。
字幕:32:うるせえ、この野郎!
Go to hell, pig!
昔のギャング映画の登場人物が言いそうな台詞ですので、かなり気に入っています。「この野郎」を「pig」(豚野郎)にしたのも、そういう映画の立てこもりのシーンにいかついゴロツキが警察に対して吐き捨てるように言うような台詞だからです。
字幕124:なまんだぶなまんだぶ…
Oh lordy, oh lordy...
ぴったりな表現を見つけるのに結構苦労しましたが、「なまんだぶ」のようなくだけた言葉で、お祈りしているようにも見えて、怯えているようにも見える気取らない言い方として「Oh lordy」はちょっとした自信作です。
「Oh lord」でしたら宗教的な印象が強いのですが、「y」をつけて「lordy」にすることによって、より可愛らしい、素朴な感じになります。
字幕146:雨降りお月さん 雲のかげ
You're hiding behind
the rainclouds, Mister Moon
この童謡の英語訳はすでに存在しますが、そのまま流用するのはあまり良くないし味気ないと思いますので、新しい英訳を作りました。韻を踏んでいるところを注目していただけたら嬉しいです。
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新谷さんや私があげた部分とも被っていて、
翻訳者の努力と心意気は伝わるものなのだなと確信いたしました(笑)
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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* 以上で、字幕関係の往復書簡は終了です。
『乙姫二万年』は、台詞は多くありませんが、日本の文化が濃厚に出ている作品なので、櫻井さん、ドンさんにはずいぶんご苦労おかけしました。
さらに、お二人にはHP用に字幕制作の裏側を往復書簡として公開したいというお願いを快諾して頂いた上、面白い字幕、興味深い翻訳までピックアップしていただきました。
櫻井さん、ドンさん、本当にありがとうございました。
また、スプレッドシートでのやりとりは大変に楽しく、特に「竜宮城」翻訳のやりとりは、アイコン化したタイトル「OTOHIME 20000」を補完するための前説字幕を発想するきっかけになりました。
「I once knew a girl named Otohime. She was the daughter of the dragon king,who lives in the sea...」
(かつて、乙姫という名の女の子を知っていました。海に住む龍王の娘でした…)
この前説は、英語字幕版での乙姫説明という以上に、『乙姫二万年』という作品の枠組み自体を拡大させる名訳だと思います。
“I”は、主人公の独白にも思えますし、作者の語りにも、観客の心に生まれて来る”I”にも思えます。
ドンさんが言われるように、まさにスター・ウォーズの『A long time ago in a galaxy far, far away...』のような、作品の世界観を大きく広げる効果になっていると思います。
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(注) 2019.2.3 字幕担当櫻井さんより、追伸
1点ご相談なのですが、沖島監督の映画
「YKK論争」とかいていますが「YYK論争」の間違いで
フルタイトルは「YYK論争 永遠の“誤解”」です。
メールを書いた際、先を急いで確認をせず、いつも通りの間違いを
してしまったまでなのですが、皆さんが目にするとなると
直していただいた方がいいのかな、と思った次第です。
そうすると新谷さんの書かれた「一万年、後。」も「一万年、後....。」
で一緒に直した方がいいのか、と気になり出しました。
(細かなことですみません。沖島監督がこの映画上映のトークの際、
肝心の理由は忘れてしまったのですが、
「~だからね、タイトルも点が一個多いの、てんてんてん、てん、とね」
といわれたのがまさに沖島さんの節回しで、
なぜかこの点々の部分はこだわってしまうのです。
とある映画のエンディングの壮大な勘違いを、むしろそれもありなのじゃないか
と、その映画の監督の目の前で面白く展開されていた沖島監督なら
タイトルのちょっとした違いもそれはそれと思われるのかもしれないのですが、
少し気になったので、ご相談でございました。
今回のメールを注釈代わりに使っていただいても、とも思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
櫻井
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